容量市場エリア別約定価格の地理構造 — 東日本・九州が高く、西日本 60Hz が安い理由 (FY2028)
OCCTO 容量市場メインオークション約定結果 (FY2028 実需給向け) のエリア別約定価格を可視化。北海道・東北・東京 14,812 / 九州 13,177 / 中部 10,280 / 北陸・関西・中国・四国 8,785 ¥/kW の 4 価格帯構造を、連系線制約 + 電源構成 + 需要パターンで読み解く。
はじめに
日本の容量市場メインオークションは、全国一律ではなくエリア別に異なる約定価格が成立します。エリア間連系線の容量制約により「電気を別エリアから自由に持ってこられない」状況が生まれ、各エリアの需給バランスが個別に価格形成されるためです。
本記事では、2024 年度に実施されたオークション (実需給 FY2028 向け) のエリア別約定価格 (OCCTO 公表、EIC catalog capacity-main-auction-price-*) を可視化し、**「なぜ東日本と九州が高く、西日本 60Hz エリアが安いのか」**の構造的背景を読み解きます。
注: 本記事のエリア別約定価格は OCCTO 公表値 (EIC catalog) です。一方、エリア別の電源構成 (火力 / 原子力 / 太陽光の割合) は EIC catalog では現状全国値のみ (
meti-gen-*) のため、以下のエリア別構造の説明は一般的に知られた電源立地・連系構造に基づく定性的な背景解説です (個別の数値は OCCTO 価格データのみが一次出典)。
エリア別約定価格 (FY2028 実需給向け、実データ)
| エリア | 約定価格 (¥/kW) | 価格帯 | |---|---|---| | 北海道 | 14,812 | 最高帯 | | 東北 | 14,812 | 最高帯 | | 東京 | 14,812 | 最高帯 | | 九州 | 13,177 | 準高値 | | 中部 | 10,280 | 中位 | | 北陸 | 8,785 | 低位 (共通) | | 関西 | 8,785 | 低位 (共通) | | 中国 | 8,785 | 低位 (共通) | | 四国 | 8,785 | 低位 (共通) |
全国加重平均は 12,210 ¥/kW (capacity-main-auction-price-national、FY2028 値)、エリア間スプレッド (最高 − 最安) は 6,027 ¥/kW (14,812 − 8,785)。FY2028 は 4 価格帯に分かれ、北陸・関西・中国・四国の 4 エリアが完全に同一価格 (8,785) で約定している点が構造の核心です。
エリア別 6 年推移チャート
エリア別の価格推移を 6 系列で並べると、FY2024 全国一律 → FY2025 暴落 + 分化開始 → FY2027 〜 FY2029 の高安パターンが読み取れます。
高値帯 (北海道・東北・東京)
中位 (中部) + 準高値 (九州)
低位・西日本 60Hz 代表 (関西)
(北陸・中国・四国は関西と同一の 8,785 / 7,638 / 12,388 などで重なるため、代表として関西のみを表示。)
なぜこの地理構造になるのか
高値帯 = 北海道・東北・東京 (14,812)
- 北海道: 北本連系線の容量が相対的に小さく本州から供給力を持ち込みにくい + 寒冷地の冬季暖房ピーク + 石炭火力の老朽化。確実に出せる供給力 (kW) の維持コストが高い。
- 東北・東京: 50Hz の大需要地で、変動の大きい再エネ拡大を埋める確実な供給力 (firm kW) への需要が強い。とりわけ東京は「大需要地だから安い」のではなく、ピーク需要を裏付ける kW を域内で確保する必要があり高値になる。
⚠️ 「大需要地の東京は容量が潤沢で安い」という直感は FY2028 実データに反証されます。東京は最高帯 (14,812) です。kWh (電力量) の取引量が多いことと、kW (確実な供給力) が足りていることは別問題です。
準高値 = 九州 (13,177)
九州は太陽光発電の導入量が突出し、昼間は出力制御が常態化するほど kWh は潤沢です。しかし容量市場が評価するのは「夜間・無日照時にも確実に出せる供給力 (kW)」であり、太陽光はこの kW としては限定的にしか算入されません。結果として九州の容量価値はむしろ高く出ます (FY2029 では全国最高の 15,112 ¥/kW)。
⚠️ 「九州は太陽光が多い = 容量が余って最安」という直感も 実データに反証されます。九州は最安どころか準高値 (13,177、FY2028 で全国 4 位) です。太陽光大量導入は kWh 価値を下げても kW 価値を下げるとは限りません。これが容量市場 (kW 価値) と JEPX (kWh 価値) を分けて見るべき最大の理由です。
低位・共通価格 = 北陸・関西・中国・四国 (8,785)
この 4 エリアは西日本 60Hz の強い連系線で結ばれ、FY2027 (7,638)、FY2028 (8,785)、FY2029 (12,388) のように複数エリアが同一価格で約定します。連系制約が緩く需給を融通し合えるため、実質的に一つの価格ゾーンとして振る舞います。関西の原発再稼働 (大飯・高浜・美浜) によるベースロード確保 + 大規模火力で、確実な供給力に余裕があることが低値の背景です。中部 (10,280) はこのゾーンと東日本の中間に位置します。
連系線増強の経済シグナル
容量市場のエリア間価格差 (FY2028 = 14,812 − 8,785 = 6,027 ¥/kW) は、連系線増強の経済性を示すシグナルとして機能します。価格の高い東日本・九州へ、価格の安い西日本 60Hz ゾーンから供給力を届けられれば、全体の容量コストは下がります。
- 北本連系線 (北海道-本州) 増強 = 北海道の高値を緩和
- 関門連系線 (九州-本州) 増強 = 九州の太陽光余剰 (kWh) を本州へ、容量面でも相互補完
これら大規模インフラ投資 (1 連系線 = 数千億円規模) の経済合理性は、容量市場価格差 + JEPX エリアプライス差 + 需給調整市場価格差の 3 大市場合計価格差で総合判断されます。
蓄電池立地への示唆 (定性)
容量市場のエリア別約定価格は、蓄電池立地戦略の重要シグナルです:
- 北海道・東北・東京 = kW 価値高エリア: 蓄電池併設で容量市場参加すれば高い kW 収入が見込め、連系線制約の緩和にも貢献。
- 九州 = 太陽光出力制御 + 容量価値高エリア: 蓄電池で昼間の余剰 (kWh) を貯め夜間の確実な供給力 (kW) として放出すれば、出力制御回避 + 容量市場収入の二重取りが狙える。
蓄電池は「kWh を時間移動して kW 価値に変える」装置であり、太陽光大量地域 (九州) の kWh 余剰と kW 高値という非対称こそが収益機会になります。
注意点と限界
- 容量市場は FY2024 から実供給開始、エリア別価格差の長期トレンドはまだ確立していない (本記事は FY2028 向けオークションのスナップショット)。
- エリア別の電源構成数値は EIC catalog では現状全国値のみ (
meti-gen-*)。エリア別の構造説明は一般的な電源立地・連系構造に基づく定性解説であり、一次データは OCCTO のエリア別約定価格。 - 連系線増強計画 (北本第 3 連系線等) の進捗でエリア別価格差は将来的に縮小する可能性。
- 出力制御 (curtailment) は補償なしのケースが多く、太陽光発電事業者の収益性に直接影響。
まとめ
容量市場のエリア別約定価格 (FY2028) は、東日本 (北海道・東北・東京) + 九州が高く、西日本 60Hz 中核 (北陸・関西・中国・四国) が低いという日本電力市場の地理的構造を可視化しています。連系線制約 + 電源構成 + 需要パターンの 3 軸が kW 価値の地域差を生み、とりわけ「太陽光が多い九州が安い」という直感が容量市場では反証される点が、kWh 価値 (JEPX) と kW 価値 (容量市場) を分けて見るべき理由を端的に示しています。
関連 Insight
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出典
- OCCTO 容量市場メインオークション約定結果(実需給年度 FY2024-FY2029、エリア別約定価格、occto-terms)
- 容量市場ガイドライン(経済産業省、2020 年制度開始)
- 当データはエネルギー情報センター運営 eic-data-pipeline が毎朝 8:00 JST に自動更新
構成系列: capacity-main-auction-price-hokkaido + capacity-main-auction-price-tohoku + capacity-main-auction-price-tokyo + capacity-main-auction-price-chubu + capacity-main-auction-price-kansai + capacity-main-auction-price-kyushu
編集物著作権: EIC Data (CC BY 4.0)
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License: CC BY 4.0 / accessed_at は自動補完@misc{eic-data-capacity-market-area-vs-power-mix,
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url = {https://data.eic-jp.org/insight/capacity-market-area-vs-power-mix},
note = {Accessed: 2026-06-04; License: CC BY 4.0},
publisher = {EIC Data}
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