EIC Data

需給調整市場 商品別 約定価格の構造 — 6 系列の年間平均落札単価で読む市場設計

EPRX 年次取りまとめより、需給調整市場 6 商品 (一次・二次①②・三次①②・複合) の年間平均落札単価を可視化。FY2024 は 2.67〜3.30 円/ΔkW・30分の狭い帯に収まり、商品差は価格より調達不足率に現れる。蓄電池・VPP の上限価格付近の高値応札が市場構造を変えつつある。

はじめに

日本の需給調整市場 (Balancing Market) は、一般送配電事業者が周波数制御・同時同量に必要な調整力 (ΔkW) を、エリアを跨いで広域・公平に調達する全国共通市場です。2021 年 4 月の三次調整力② 開始を皮切りに、2022 年 4 月に三次調整力①2024 年度に一次・二次調整力①②・複合商品が加わり、全商品が出揃いました。約定結果は 一般社団法人 電力需給調整力取引所 (EPRX) が年次で取りまとめて公表します。

本記事では、EPRX 公表の「平均落札単価 (年間)」を商品別に並べ、年間平均落札単価 (円/ΔkW・30分) という統一の物差しで価格構造を読み解きます。粒度は年次です。

商品の階層 — 応動時間が速いほど高速応答が要る

| 商品 | 応動時間の目安 | 役割 | |---|---|---| | 一次調整力 | 数秒 (GF: ガバナフリー) | 周波数の即時維持 | | 二次調整力① | 数分 (LFC) | 負荷周波数制御 | | 二次調整力② | 数分 (LFC) | 同上 | | 三次調整力① | 15 分以内 (EDC) | 経済負荷配分 | | 三次調整力② | 45 分以内 | 再エネの予測誤差対応 (最も緩い) | | 複合商品 | 上記をまとめて応札 | 大宗は三次調整力① |

価格はすべて 円/ΔkW・30分 (30 分コマあたりの kW 価値の単価) で表されます。容量市場の「円/kW (年間 kW 価値)」とは桁も意味も異なるので注意してください (混同しないこと)。

6 商品の年間平均落札単価 (チャート)

Loading 需給調整市場 6 系列…

6 商品を 1 枚に重ねたチャート。点線は EPRX 取りまとめ PDF に示される上限価格 19.51 円/ΔkW・30分 の参照線です。商品差は思ったほど大きくありません。

年間平均落札単価の実態 (円/ΔkW・30分)

| 商品 | FY2024 | FY2025 上期※ | |---|---|---| | 一次調整力 | 3.10 | 3.63 | | 二次調整力① | 3.21 | 2.94 | | 二次調整力② | 2.67 | 2.67 | | 三次調整力① | 2.69 | 2.66 | | 複合商品 | 2.80 | 2.87 | | 三次調整力② | 3.30 | 1.14 |

※ FY2025 は上期 (4〜9 月) のみの暫定平均。

ここで一番大事な発見は、商品間の価格差が小さいことです。FY2024 はすべて 2.67〜3.30 円/ΔkW・30分の狭い帯に収まっています。「応動が速い商品ほど何倍も高い」という直感は、約定単価では成立していません。

価格より「不足率」に商品の性格が出る

商品ごとの違いは、価格よりも 調達不足率 に強く現れます (EPRX 公表、不足率=調達不足量/募集量、FY2024)。

| 商品 | 不足率 (FY2024) | |---|---| | 一次調整力 | 約 84% | | 二次調整力① | 約 65% | | 複合商品 | 約 46% | | 三次調整力① | 約 39% | | 三次調整力② | 約 37% | | 二次調整力② | 約 19% |

一次調整力の不足率が突出して高いのは、商品要件として電源等の並列を必須とすることと、週間断面での応札ゆえに需給の不確実性が大きいためです。「速い商品は単価が少し高め、しかし集めにくい (不足率が高い)」という構造が読み取れます。

なお不足率は 2023→2024 年度で定義が変わっている (旧: 追加調達後の未達率/新: 調達不足量÷募集量) ため、年度を跨ぐ長期比較には使えません。本記事の不足率は FY2024 の新定義値です。

三次調整力② だけは長期で動く

三次調整力② は市場開設の 2021 年度から取れる唯一の長期系列です。年間平均落札単価は 2.58 → 3.49 → 1.46 → 3.30 → 1.14 (FY2021→FY2025 上期) と大きく上下しています。燃料価格・卸電力価格の局面に連動する動きで、詳細は関連記事「三次調整力② × JEPX」で扱います。

Loading balancing-price-tertiary-2

電源種別別 — 蓄電池・VPP が上限価格付近で突出

2024 年度から、EPRX は電源種別別 (火力/水力/揚水/蓄電池/VPP) の平均落札単価も公表しています。火力・水力・揚水が概ね 1〜4 円/ΔkW・30分で推移するのに対し、蓄電池と VPP (DR 等) は上限価格付近の高値で応札する局面が目立ちます。とくに三次調整力② では、月によって蓄電池が 160〜235 円/ΔkW・30分という極端な高値で約定し、少量ながら全調達費用の大きな割合を占める月もありました。

この「蓄電池・VPP の高値応札」は、需給調整市場における蓄電池ビジネスの収益構造を理解する鍵で、業界レポートとも接続するテーマです。

注意点と限界

まとめ

需給調整市場の商品別約定価格は、「速い商品ほど何倍も高い」わけではなく、FY2024 は 2.67〜3.30 円/ΔkW・30分の狭い帯に収まります。商品の性格差は価格よりも 不足率 (一次 84% 対 三次② 37%) に現れ、価格面の旬は 蓄電池・VPP の上限価格付近の高値応札 にあります。次の関連記事では、唯一の長期系列である三次調整力② と JEPX スポット・燃料価格の年次連動を読み解きます。

関連 Insight

出典


構成系列: balancing-price-primary + balancing-price-secondary-1 + balancing-price-secondary-2 + balancing-price-tertiary-1 + balancing-price-tertiary-2 + balancing-price-composite 編集物著作権: EIC Data (CC BY 4.0)

📋 引用形式コピー

License: CC BY 4.0 / accessed_at は自動補完
@misc{eic-data-balancing-market-5-products-comparison,
  title = {需給調整市場 商品別 約定価格の構造 — 6 系列の年間平均落札単価で読む市場設計 (balancing-market-5-products-comparison)},
  author = {EIC Data (一般社団法人エネルギー情報センター)},
  year = {2026},
  url = {https://data.eic-jp.org/insight/balancing-market-5-products-comparison},
  note = {Accessed: 2026-06-04; License: CC BY 4.0},
  publisher = {EIC Data}
}
学術引用 + 媒体取材の出典として使用可。一次出典 (本サイト) も併記推奨。

💬 リーダーコメント

GitHub Issues 連動 (全コメント一覧)

コメント投稿には GitHub アカウントが必要。投稿は kenjieda-eng/eic-data-web リポジトリの Issue (label: comment) として保存され、誰でも閲覧できます。

コメント欄を読み込み中…

続報を週次で受け取る

EIC Data の Insight 新着 + JEPX 特異日 + 用語集新項目を、毎週土曜朝にお届けします。

EIC Data 週次ニュースレター

毎週土曜朝、Insight ハイライト + JEPX 特異日 + 用語集新項目をお届けします。