需給調整市場の電源種別別 落札単価 — 蓄電池・VPP の高値と揚水の基準線(FY2024〜)
EPRX 年次取りまとめより、需給調整市場の電源種別別 (揚水 / 蓄電池 / VPP) 平均落札単価を商品別に対比。三次調整力②は FY2024 の 揚水 0.72 / 蓄電池 109.43 / VPP 46.24 円/ΔkW・30分 という二極構造から、FY2025 は蓄電池 19.31 (−82%)・VPP 53.59 の逆転へ一変。調達不足率の劇的改善 (36.9%→2.1%) が高値局面を縮小させた。単価は volume-weighted でなく「約定時の単価水準」であり、市場全体の単価でも市場寄与でもない点を明示。
はじめに
需給調整市場では、同じ商品(一次・二次・三次・複合)でも、応札する電源の種別によって落札単価が大きく異なります。EPRX は 2024 年度から電源種別別(火力 / 水力 / 揚水 / 蓄電池 / VPP〔DR 等〕)の平均落札単価を公表しており、本記事では 揚水(従来電源)と 蓄電池・VPP の年平均落札単価(円/ΔkW・30分)を商品別に対比します。粒度は年次です。
⚠️ 最初に:この単価は「volume-weighted」ではない
⚠️ 本記事の電源種別別単価は「その電源が約定した月の平均単価」で、約定ボリュームで加重されていません。蓄電池・VPP の高値は小さなボリュームに乗っています(EPRX 2024 PDF: 三次② で 50 円/ΔkW・30分 超の落札量 2.3% が全調達費用の 61%)。
つまり「蓄電池の年平均 109 円」は **市場全体の単価でも、蓄電池の市場寄与でもなく、「蓄電池が約定したときの単価水準」**です。蓄電池・VPP が市場の主役という意味ではありません。収益試算では「単価 × 落札量(希少性)」で評価してください。
三次調整力② の電源種別別(最も対比が鮮明)
| 電源 | FY2024 | FY2025※ | |---|---|---| | 揚水(従来電源) | 0.72 | —(合算公表へ移行) | | 水力・揚水(合算) | — | 0.64 | | 蓄電池 | 109.43 | 19.31 | | VPP(DR 等) | 46.24 | 53.59 | | (商品全体平均) | 3.30 | 1.15 |
※ FY2025 は通年確報(2026-06-18 公表)。EPRX は FY2025 から水力・揚水を合算で公表しており、当サイトも FY2025 以降は合算系列(balancing-price-*-hydro-pumped)で収載。
揚水(FY2025 からは水力・揚水合算)は 1 円を切る安定した基準線である一方、FY2024 の蓄電池は商品平均の約 33 倍という上限価格付近の高値で約定していました。これが「蓄電池は需給調整市場の希少な高値局面で稼ぐ」という FY2024 までの構造です。FY2025 はこの構造が一変しました — 蓄電池は 109.43 → 19.31(−82%)、VPP は 53.59 で蓄電池を逆転し、対揚水格差は約 152 倍 → 約 30 倍へ縮小。背景には調達不足率の劇的な改善があります(三次② 36.9% → 2.1%)。不足がほぼ解消したことで、高値約定の局面そのものが細ったと読めます。
揚水(基準線、1 円前後)
蓄電池(上限価格付近で約定する局面)
VPP(DR 等、FY2025 は蓄電池を上回る水準)
3 系列を 同じ y 軸スケールで並べると揚水だけ底に張り付くため、ここでは各系列を個別に表示し、相対水準は上表の数値で読んでください。なお揚水の系列は EPRX の公表変更に伴い FY2024 で終端し、FY2025 以降は水力・揚水(合算)に引き継がれています。
商品をまたいだ蓄電池 vs 揚水(FY2024)
| 商品 | 揚水 | 蓄電池 | |---|---|---| | 一次調整力 | 4.17 | 15.99 | | 二次調整力① | 3.70 | 7.71 | | 二次調整力② | 1.84 | 12.61 | | 三次調整力① | 1.90 | 10.60 | | 複合商品 | 2.12 | 15.80 | | 三次調整力② | 0.72 | 109.43 |
どの商品でも蓄電池は揚水の数倍で約定しており、応動の速さ(一次・二次)と再エネ予測誤差対応(三次②)の両極で蓄電池の価値が際立ちます。VPP(DR 等)は三次②・複合・一次で約定が見られ、三次② で蓄電池に次ぐ高値水準です(FY2024 46.24 / FY2025 53.59 で蓄電池を逆転)。
代表 1: 一次調整力(揚水 4.17 vs 蓄電池 15.99)
代表 2: 複合商品(揚水 2.12 vs 蓄電池 15.80)
bess(蓄電池)ビジネスへの示唆
- 蓄電池は「kWh を時間移動して、調整力(ΔkW)の希少な高値局面に充てる」装置。揚水という従来の調整電源と比べ、応動速度と立地自由度で優位。
- ただし**収益の核は「高値 × 落札できる希少性」**であり、headline 単価 × 全量ではない。落札量(volume)と稼働率を必ず併せて評価する。
- VPP(次世代アグリゲーター・低圧リソース)は FY2025 の三次②で蓄電池を上回る水準(53.59 vs 19.31)に達し、参入が広がる領域。
注意点と限界
- 年次・手動(EPRX 年次取りまとめ PDF)。電源種別別の公表は FY2024 以降。FY2025 は通年確報(2026-06-18 公表)を収載済み。
- 火力・水力は本記事では未収録(第3カットで追加予定)。
- 単価は volume-weighted でない(再掲)。エリア別・コマ別の粒度は当サイトでは扱わない(EPRX results.php は自動取得しない=D-018)。
まとめ
需給調整市場の電源種別別単価は、FY2024 時点では揚水(1 円前後の基準線)と蓄電池・VPP(上限価格付近の高値、特に三次②)という二極構造を示しました。しかし FY2025 は調達不足率の改善(三次② 36.9%→2.1%)で高値局面が細り、蓄電池の商品別レンジは 7.71〜109.43 から 11.50〜19.31 へ収束、三次②では VPP が蓄電池を上回りました。「三次②の異常高値を当てにいく」前提は FY2024 限定の姿になりつつあり、全商品でならした収益設計への移行が示唆されます。高値が小ボリュームに乗る「約定時の単価水準」という読み方の注意は、両年度とも変わりません。
関連 Insight
- #62 需給調整市場 商品別 約定価格の構造 — 6 商品の年間平均落札単価の俯瞰(本記事は電源種別別への切り口違い)
- #63 三次調整力② × JEPX — 唯一の 5 年系列、卸価格・燃料との年次連動
- #64 容量市場エリア別約定価格の地理構造 — 同じく市場系の姉妹編集(kW 価値・エリア別)
- 市場ハブ: 需給調整市場 (EPRX) 編集ページ — 6 商品の最新値と階層図
出典
- 電力需給調整力取引所 (EPRX) 取引実績の取りまとめ結果 — 年次取りまとめ PDF より転記・編集 (加工した旨を明記)
- EPRX 利用規約 §4 (非商用・出典明示で利用可、自動的な大量取得は事前承諾)
- 当データはエネルギー情報センター運営 eic-data-pipeline が手動更新
構成系列: balancing-price-tertiary-2-pumped + balancing-price-tertiary-2-battery + balancing-price-tertiary-2-vpp + balancing-price-primary-pumped + balancing-price-primary-battery + balancing-price-composite-pumped + balancing-price-composite-battery
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