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託送料金の仕組み:電気を「運ぶ」料金は誰がいつ払っているか

電気料金の構造で挙げた積み上げのうち、最後まで深掘りしていなかった層が**託送料金**——送配電網の利用料である。卸電力・燃料費調整・容量・調整力・再エネ賦課金は既に見た。本ガイドで、料金の分解シリーズは一区切りとなる。

3つのポイントで読む

| 論点 | 要点 | |---|---| | 何の料金か | 送電線・変電所・配電線という送配電網の利用料。発電と小売が自由化された今も、送配電は各地域の一般送配電事業者が担う規制部門で、その網を使う対価 | | 誰が払うか | 小売電気事業者が一般送配電事業者に支払い、電気料金に転嫁される——つまり実質的に全需要家。基本料金(kW)+電力量料金(kWh)の二部制で、電圧区分(特別高圧/高圧/低圧)により単価が異なる | | どう決まるか | 競争ではなく国の審査。2023年度からはレベニューキャップ制度——一般送配電事業者が5年間の必要収入を申請し、国が査定して収入上限を承認、その範囲内で料金を設定する |

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全国の販売電力量(GWh、月次、METI電力調査統計)。託送料金の電力量料金部分は使用電力量(kWh)に応じて支払われるため、これはその「課金ベース」の総量にあたる——託送料金そのものの系列ではない点に注意。

① なぜ託送料金があるのか — 自由化されなかった唯一のレイヤー

2016年の小売全面自由化で、誰でも小売事業者を選べるようになった。発電も参入自由である。しかし送配電網だけは二重に引けない。同じ町に送電線を2本並べて競争させるのは社会的に無駄だからで、これを自然独占という。

だから送配電は自由化せず、各地域の一般送配電事業者が担う規制部門として残った(2020年4月には発送電の法的分離で、大手電力の送配電部門が別会社化されている)。どの小売から電気を買っても、住んでいる地域の送配電網を通って届き、同じ託送料金がかかる。小売間の競争は、託送より上のレイヤー——電源調達と小売経費——で起きている。電力市場の3層で見た市場の世界と、規制料金の世界がここで接している。

② 何が含まれているか — 「運ぶ費用」だけではない

中身の第一は素直で、送配電網の建設・維持・運用、そして周波数を保つための系統運用の費用である。電圧区分で単価が違うのは、低圧(家庭)ほど変電所を経て配電網の深くまで使うからだ。

注意したいのは、託送料金が制度負担の回収経路にもなっていることである。電源開発促進税は送配電段階で課されて託送料金に織り込まれるほか、2020年度からは福島第一原発事故の賠償負担金と廃炉円滑化負担金も託送料金を通じて回収されている。電気料金の構造で「性質の違うコストの積み上げ」と述べたが、託送料金はその内部がさらに積み上げになっている典型例だ。

③ レベニューキャップ — 「規制のまま効率化させる」設計

規制料金の古典的な弱点は、費用を積み上げるほど料金を上げられる(効率化の動機がない)ことだった。2023年4月に始まったレベニューキャップ制度はこれを裏返す。

一般送配電事業者は5年間の事業計画と必要収入を国に申請し、査定を経て**収入上限(レベニューキャップ)**の承認を受ける。期間中はその上限の範囲内で託送料金を設定する。上限が固定されているから、効率化して費用を下げた分は事業者の利益になる——規制を保ったまま効率化インセンティブを埋め込む設計で、欧州の送配電規制で使われてきた方式の日本版である。

④ データの読み方 — 当サイトでの扱いと3つの誤読

託送料金そのものの時系列は、当サイトには収載していない。事業者(10社)× 電圧区分 × 契約種別で単価が多次元にわたり、単一の代表系列にしにくいためだ。規模感としては家庭向け料金のおおむね3割前後を占めるとされるが、正確な単価は契約している区分について、各一般送配電事業者が公表する託送供給等約款(一次資料)で確認するのが確実である。

よくある3つの誤読を挙げる。

  1. 「託送料金=送電線の建設費」ではない。 維持・運用・系統運用に加え、賠償負担金・廃炉円滑化負担金など制度負担の回収経路でもある(②参照)。
  2. 「自由化されたから託送も競争で安くなる」ではない。 託送は規制料金のままで、下げる仕組みは競争ではなくレベニューキャップの査定と効率化インセンティブである(③参照)。
  3. 「再エネ賦課金も託送料金の一部」ではない。 賦課金は請求書上も制度上も別項目である(FIT/FIPの読み方参照)。ただし賠償・廃炉負担金は託送経由という例外があり、ここが混同されやすい。

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