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日本の温室効果ガス排出量の読み方:総排出量・ネット・部門別の使い分け

「日本の排出量は◯億トン」という数字は、実はどれを指すかで3つ以上ある。国立環境研究所(GIO)が毎年公表する温室効果ガスインベントリは、日本の気候変動政策のすべての土台になる一次データだが、総排出量・ネット・部門別は範囲が異なり、部門別を足しても合計にならないという構造も持つ。本ガイドは、当サイトが2026年8月から収載した18系列の取扱説明書である。

3つのポイントで読む

| 論点 | 要点 | |---|---| | どの数字か | 総排出量=排出だけを合計(森林などの吸収を差し引く前)。ネット(排出・吸収量)=総排出量から森林等の吸収量を引いた後。国際的な削減目標の進捗はネットで語られることが多い | | 何年と比べるか | 日本の目標の基準年は2013年度(2030年度に46%削減、50%の高みへ挑戦)。1990年度比ではないため、「◯%減」を見たらどの年を基準にした数字かの確認が要る | | 部門別の注意 | 部門別CO2は「電気・熱配分後」=発電で出たCO2を、電気を使った側(産業・家庭など)に割り振った後の値。そして5部門を足しても合計には一致しない(後述の統計誤差) |

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日本の温室効果ガス総排出量(Mt-CO2e、年度)。1990年度から2024年度まで35年分。2013年度のピーク以降の減少トレンドと、2020年度(コロナ禍)の落ち込み、その後の反転が読み取れる。

① 総排出量とネット — 森林の吸収をどう扱うか

2024年度(速報ではない確報ベース)の日本の総排出量は約10億4,600万トン(1,046.4 Mt-CO2e)。ここから森林などによる吸収量 約5,230万トンを差し引いたネットが約9億9,400万トンである。

同じ「日本の排出量」でも、この2つは5%ほど違う。国連への報告や削減目標の達成度はネットで語られ、産業構造や電源構成の議論では総排出量が使われることが多い。当サイトでは 総排出量ネット森林等吸収量 を別系列として収載しているので、引用時はどれを使ったかを明記するのが誠実な使い方だ。

なお吸収量は森林の高齢化などで長期的には減少傾向にあり、「吸収でどこまで相殺できるか」自体が政策論点になっている。

② ガス別の構成 — CO2が9割、しかし他のガスも侮れない

温室効果ガスは6種類(CO2・メタン・一酸化二窒素・代替フロン等4ガス)がCO2換算で合算される。日本ではCO2が総排出量の約9割を占めるが、残りにも注目点がある。

代替フロン等4ガス(HFCs/PFCs/SF6/NF3)は約3,220万トンで、量としては3%程度ながら、オゾン層保護のためのフロン転換で近年まで増加してきたという他と逆向きの歴史を持つ(近年は対策が進み減少局面)。メタン一酸化二窒素は農業・廃棄物由来が中心で、エネルギー政策とは別の対策軸になる。

③ 部門別の落とし穴 — 「電気・熱配分後」と統計誤差

部門別CO2(2024年度)は概ね次の構成である。

| 部門 | 排出量(Mt-CO2) | |---|---| | 産業 | 334.1 | | 運輸 | 187.2 | | 業務その他 | 162.2 | | 家庭 | 146.2 | | エネルギー転換 | 79.1 |

ここで2つ、読み間違えやすい点がある。

第一に「電気・熱配分後」であること。 発電所で出たCO2は、発電した側ではなく電気を使った側に配分されている。だから家庭部門の排出には「自宅で使った電気を作るときに出たCO2」が含まれる。電源構成が脱炭素化すれば、家庭が何も変えなくても家庭部門の排出は減る——電源構成のデータと併せて読むべき理由がここにある。逆に「発電した場所」で見たい場合は配分前の統計が必要で、当サイトの部門別系列は配分後である点に注意してほしい。

第二に、5部門を足しても合計に一致しない。 上の5部門の合計は908.8だが、エネルギー起源CO2は906.6である。差は電気・熱配分に伴う統計誤差で、GIOの原表では独立した行として扱われている(当サイトでは系列化していない)。さらに非エネルギー起源CO2(工業プロセス・廃棄物など)64.9を足して、CO2合計 971.5になる。積み上げグラフを作るときは、この誤差の存在を明記しないと数字が合わない

④ 引用時に間違えやすい3点

  1. 「2013年度比」と「1990年度比」を混同しない。 日本の目標は2013年度基準(2024年度は2013年度比で約3億9,950万トンの減少)。国際比較では1990年度基準が使われることもあり、同じ「◯%減」でも意味が変わる。
  2. 速報値と確報値を混ぜない。 インベントリは毎年4月頃に前々年度の値が公表され、過去年の値も遡及改定される。当サイトは規約(公開日の異なる版を組み合わせない)に従い、毎回全期間を最新版で置き換えている——過去の数字が前回と変わることがあるのは、そういう仕組みだからである。
  3. 「排出量が減った=努力の成果」と即断しない。 減少には景気変動・電源構成の変化・省エネ・産業構造の転換が混在する。2020年度の落ち込みはコロナ禍の経済停滞が大きい。指標の読み方ガイドの「相関は因果でない」がそのまま当てはまる領域だ。

関連

編集物著作権: EIC Data (CC BY 4.0)。本記事が参照する温室効果ガスデータの出典は国立環境研究所 温室効果ガスインベントリオフィス(GIO)で、同データはGIOの利用規約に従います(各系列ページのメタデータを参照)。

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