石炭の代わりにガスが来たのか:天然ガスシェアの10年
「脱石炭の通信簿」(#85)で石炭の退場を、「石炭が抜けた先」(#86)で風力+太陽光の急増を見た。残るのは天然ガスだ。よく「石炭はガスに置き換わった」と言われる。それはどこまで本当か。電気に占めるガスのシェアを同じ5か国で10年並べると、答えは「主役は米国だけ」だった。
背景:脱石炭3部作の最後のピース
石炭が抜けた分の受け皿として、再エネ(#86)と並んでよく挙げられるのが天然ガスだ。本記事はEmberの電源別シェア比較の3本目で、ガスに焦点を当てる。石炭・再エネ・ガスの3枚を重ねると、「各国の石炭がどこへ行ったか」が見えてくる。
データ:天然ガスの発電量シェア(年平均, %)
| 国 | 2015 | 2020 | 2025 | 10年の変化 | |---|---:|---:|---:|---| | 米国 | 32.6 | 40.0 | 39.7 | +7.1pt(5か国で最高・唯一ガスが主役) | | 英国 | 29.8 | 37.4 | 31.5 | +1.7pt(2018-22に41%、その後低下) | | 日本 | —※ | 38.7 | 30.1 | −8.9pt※(原子力回復で縮小) | | ドイツ | 9.6 | 16.9 | 16.5 | +6.9pt(低位のまま) | | 中国 | 2.6 | 3.1 | 2.8 | +0.2pt(一貫してほぼゼロ) |
※ 日本のEmber月次は2018-04開始のため2015欄は「—」、変化は2018年(39.0%)基準。
3部作の合流:各国の石炭はどこへ行ったか(2015→2025, シェアの変化pt)
| 国 | 石炭 #85 | 風力+太陽光 #86 | ガス #87 | |---|---:|---:|---:| | 英国 | −25.5 | +26.2 | +1.7 | | ドイツ | −22.1 | +27.1 | +6.9 | | 米国 | −16.7 | +13.4 | +7.1 | | 中国 | −16.6 | +14.5※ | +0.2 | | 日本 | −1.6 | +4.6※ | −8.9※ |
※ 日本・中国は2018年基準(データ起点の都合)。電源構成は原子力・水力なども動くため、3列の合計は厳密には一致しない。
米国:ガスシェアは2015年の33%から2025年約40%へ。5か国で唯一、ガスが最大の電源になっている。
日本:ガス(LNG)は2018年39%から2025年30%へ低下。原子力の部分回復に席を譲りつつある。
読み解き
- ガスが主役なのは米国だけ:米国は2025年で約40%とガスが最大の電源で、5か国で唯一「石炭→ガス」の置き換えが当てはまる。安価なシェールガスが石炭を押し出した構図だ。ただしこの10年に限れば、米国でも増えたのはガス(+7pt)より再エネ(+13pt)の方が大きい——ガスへの置換の山場は2010年代前半だった。
- 英・日は「ガス大国だが縮小局面」:英国はガスを2018〜22年に41%まで上げたが、洋上風力の急増(#86)に押されて2025年は31%へ後退した。日本はガス(LNG)が主力電源だったが、原子力の部分回復(#69)で39%→30%へ縮小。両国ともガスは「コの字」を描き、いまは再エネ・原子力に席を譲りつつある。
- ドイツは元からガスが小さい:9.6%→16.5%と低位の微増にとどまる。ドイツの脱石炭(−22pt)を埋めたのはほぼ再エネ(+27pt)で、ガスではない。
- 中国はガスがほぼ存在しない:一貫して約3%。石炭(−17pt)の受け皿は再エネで、ガスは電源構成にほとんど登場しない。
- 3部作の結論:「石炭の代わりにガス」は半分しか正しくない:ガスが主役と言えるのは米国だけで、しかも米国でもこの10年の増分は再エネが上回る。英・日ではガスはむしろ縮小局面に入った。脱石炭の主役は、この10年では再エネ(#86)だった——そして日本は、その再エネもガスも石炭も大きく動かないまま、原子力の戻りで需給を回している。
注: 本記事は過去データ(月次→年平均、Emberのシェア%)の記述的分析であり、将来予測ではない。シェア(%)は発電量に占める割合で、絶対発電量とは別の指標である。日本のガス減少は原子力の再稼働や需要動向など複数の要因を反映し、単一原因には帰せない。なお米国のガスは主に国産パイプラインガス、日本のガスは輸入LNGで、供給構造とコストの性質が異なる。データ起点は国で異なる(日本2018-04、米国2001〜)ため年平均で比較した。
出典
- 天然ガスの発電量シェア: Ember, Monthly Electricity Data(グローバル月次電力統計), 月次。CC BY 4.0。系列:
ember-share-gas-{gb,de,us,jp,cn}。
編集物著作権: EIC Data (CC BY 4.0)
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author = {EIC Data (一般社団法人エネルギー情報センター)},
year = {2026},
url = {https://data.eic-jp.org/insight/gas-share-5countries},
note = {Accessed: 2026-06-19; License: CC BY 4.0},
publisher = {EIC Data}
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