石炭が抜けた先:風力+太陽光シェアの10年
前記事「脱石炭の通信簿」では、英国が石炭をゼロにし、日本だけが止まったままだと見た。では、抜けた石炭の「代わり」に何が来たのか。電気に占める風力+太陽光の割合を、同じ5か国で10年並べる。脱石炭が進んだ国ほど、風力+太陽光を積み増していた。
背景:脱石炭の「裏側」を見る
石炭シェアが下がるなら、その分どこかの電源が増えているはずだ。本記事は #85 の鏡像で、増えた側——この10年で各国が積み増した風力+太陽光(いわゆる変動性再エネ、今世紀の新設の主役)に焦点を当てる。水力やバイオは既設の比重が大きく国差が出にくいため、ここでは「この10年で建てた再エネ」に近い風力+太陽光を主指標にする。
データ:風力+太陽光の発電量シェア(年平均, %)
| 国 | 2015 | 2020 | 2025 | 10年の変化 | (参考)石炭の変化 #85 | |---|---:|---:|---:|---|---| | ドイツ | 19.6 | 33.0 | 46.7 | +27.1pt | −22.1pt | | 英国 | 16.3 | 33.0 | 42.5 | +26.2pt | −25.5pt | | 中国 | —※ | 9.6 | 22.3 | +14.5pt※ | −16.6pt | | 米国 | 5.7 | 11.8 | 19.1 | +13.4pt | −16.7pt | | 日本 | —※ | 8.8 | 11.8 | +4.6pt※ | −1.6pt |
※ 日本のEmber月次は2018-04開始、中国は風力+太陽光の結合で2016開始(太陽光が2016〜)。両国の変化は2018年基準(日本7.2→11.8、中国7.8→22.3)。
英国:風力シェアは2015年の13%から2025年34%へ。北海の洋上風力が、閉鎖した石炭火力の穴を埋めた。
日本:風力シェアは2025年でも1.4%。10年間ほぼ横ばいで、5か国の中で際立って低い。
読み解き
- 英・独は「石炭→風力+太陽光」のほぼ1対1の置き換え:英国は石炭が−25.5pt減る間に風力+太陽光が+26.2pt増え、ほぼ等量を入れ替えた。ドイツも石炭−22ptに対し風力+太陽光+27pt(脱原発の穴埋めも兼ねるため、石炭減を上回って積み増した)。石炭は「消えた」のではなく「置き換わった」。
- 米国は石炭→ガス+再エネ:米国も風力+太陽光を5.7%→19.1%へ伸ばしたが、石炭減(−16.7pt)の最大の受け皿は安価なシェールガスだった。脱石炭の「代わり」は国によって再エネとは限らない。
- 中国は世界最大の再エネ建設国、それでも石炭シェアは最高:風力+太陽光を2016年以降で22.3%まで積み増し、絶対設備量は世界最大。だが電力需要そのものが急拡大するため、石炭シェア(55.6%、#85)はなお5か国で最高に留まる。シェアの増減は絶対量の増減とは別。
- 日本は風力がほぼ存在しない:日本の風力+太陽光は2018年7.2%→2025年11.8%で、5か国の中で最も伸びが小さい。しかも増えた分はほぼ太陽光(10.4%)で、風力は1.4%(英34.3%・独27.5%)。洋上・陸上ともに風力の導入がほとんど進んでいない。
- #85 の裏返し:前記事で「日本だけ石炭が抜けない」と見た。その理由がこの一枚だ。日本は石炭を置き換える風力+太陽光——とりわけ風力——を、先進国の中で唯一ほとんど建ててこなかった。脱石炭の停滞と再エネ出遅れは、同じコインの裏表である。
注: 本記事は過去データ(月次→年平均、Emberのシェア%)の記述的分析であり、将来予測ではない。シェア(%)は発電量に占める割合で、絶対発電量とは別の指標である(中国は需要拡大で分母が膨らみ、絶対量は大きく増えてもシェアの伸びは抑えられる)。「風力+太陽光」は変動性再エネを指し、水力・バイオを含む総再エネシェアはこれより高い(2025年: 英52% / 独59% / 米26% / 日26% / 中37%)。データ起点は国で異なる(日本2018-04、中国の結合2016、米国2003)ため年平均で比較した。再エネ導入のペースを規定する要因(政策・風況や日射などの資源賦存・系統制約・ガス価格)は国ごとに異なり、単一原因には帰せない。
出典
- 風力・太陽光の発電量シェア: Ember, Monthly Electricity Data(グローバル月次電力統計), 月次。CC BY 4.0。系列:
ember-share-wind-{gb,de,us,jp,cn}/ember-share-solar-{gb,de,us,jp,cn}。
編集物著作権: EIC Data (CC BY 4.0)
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