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日本はロシア炭を切った:脱ロシアが石炭で完遂し、LNGで残ったわけ

原油は一極化、LNGは多様」(#78)では、ロシア産LNGが侵攻後も8〜9%で動かず「脱ロシアは未達」と結んだ。だがそれはLNGの話だ。同じ時期、石炭ではロシアをほぼ完全に切っていた。輸入額シェアでロシア炭は10%から0.7%へ消えた。なぜ石炭は切れて、LNGは切れなかったのか。脱ロシアの「濃淡」を相手国データで読む。

背景:脱ロシアは一枚岩ではない

日本は原油・LNG・石炭をほぼ全量輸入に頼る。2022年のウクライナ侵攻はその相手国に大きな圧力をかけたが、対応は燃料ごとに分かれた。原油はもともとロシア依存が小さく(中東依存の深化は#78)、論点は石炭とLNGに集約される。財務省貿易統計(e-Stat)の輸入額で、2016〜2025年のロシア依存の変化を追う。

データ:ロシア炭は禁輸でほぼ消滅した

| 年 | ロシア炭 シェア(%) | ロシア炭 輸入額(億円) | |---|---:|---:| | 2016 | 9.0 | 1,506 | | 2021 | 10.2 | 2,863 | | 2022 | 6.1 | 4,760(価格急騰) | | 2023 | 1.9 | 1,123 | | 2024 | 0.6 | 292 | | 2025 | 0.7 | 233 |

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ロシアからの石炭輸入額。2022年の約4,760億円をピークに、G7の禁輸で2025年は約233億円へ(ピーク比 −95%)。

一方、ロシアLNGは残った(対ロシア シェアの対比, %)

| 燃料 | 2021 | 2025 | この10年の対応 | |---|---:|---:|---| | 石炭 | 10.2 | 0.7 | 禁輸・ほぼ消滅 | | LNG | 8.7 | 8.8 | サハリン2を維持 | | 原油 | ほぼ0 | ほぼ0 | 元から非ロシア |

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ロシアからのLNG輸入額。石炭と対照的に、約5,000億円規模を維持している。

読み解き

  1. 日本はロシア炭を切った:2021年に約10%あったロシア炭の輸入額シェアは、2022年の侵攻後にG7が足並みを揃えた禁輸で、2025年には0.7%へほぼ消滅した。金額でも2022年の約4,760億円→2025年約233億円(ピーク比 −95%)。空いた分は豪州(約67%を維持)・インドネシア・米国など、既存の多様な供給先で埋めた。
  2. なぜ石炭は切れたのか:石炭はスポット調達が中心で、産炭国が多く受入設備も汎用的なため、供給国の振り替えが利く。だから日本はG7の制裁に短期で追随できた。
  3. LNGはなぜ切れなかったのか:対照的に、ロシアLNG(サハリン2)はシェア約9%で不動、金額も2025年で約5,000億円規模を維持した。LNGは長期契約・上流権益・専用受入基地が絡み、即時撤退が供給途絶に直結しかねない。日本はエネルギー安全保障上の例外として残した。調達構造の違い——スポットか、長期権益か——が、脱ロシアの可否を分けた
  4. #78 の補完:前記事#78は「脱ロシアは未達」と結んだが、それはLNGに限った話だった。石炭まで含めて見ると、日本の脱ロシアは「石炭で完遂・LNGで未達」という濃淡のある姿になる。「脱ロシアが進んだか」は、どの燃料を指すかで答えが変わる。
  5. 結論:エネルギー安全保障は「どの燃料を、誰から」の連立方程式だ。日本は切れる燃料(石炭=スポット)から切り、切れない燃料(LNG=長期権益)は残した。脱ロシアの達成度は、政治的意思だけでなく、燃料ごとの調達構造に強く規定されている。

注: 本記事は過去データ(財務省貿易統計/e-Stat、2016〜2025年、輸入額・千円、年次)の記述的分析であり、将来予測でも政策評価でもない。シェアは輸入「額」ベースで価格変動の影響を受けるため数量シェアとは一致しない(2022年にロシア炭の額が一時増えたのは、数量が減る一方で価格が急騰したため)。相手国系列は主要輸入先を対象とし全相手国を網羅しない。原油のロシア比率は本データの追跡対象では一貫して僅少。

出典

編集物著作権: EIC Data (CC BY 4.0)

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