原油は一極化、LNGは多様:日本のエネルギー調達 10年の二つの方向
前記事で見た2025年のスナップショットを、10年さかのぼってみる。原油は中東依存が 77%→94% へ深まり、LNG は米シェールの参入で供給国が多様なまま。原油は「一極化」、LNG は「多様」——同じ輸入燃料でも進む方向は逆だった。
背景:分散したのか、集中したのか
前記事「日本のエネルギーは誰から買っているか」では、2025年の時点で原油が中東に94%依存していることを見た。では、この10年で日本のエネルギー調達は分散したのか、それとも集中したのか。財務省貿易統計の相手国別輸入額を2016年までさかのぼって追う。
原油:中東への「一極化」が進んだ
| 年 | 中東依存度(金額ベース) | |---|---:| | 2016 | 77.4% | | 2018 | 81.4% | | 2020 | 89.4% | | 2022 | 93.9% | | 2024 | 95.1% | | 2025 | 94.1% |
原油の中東依存度は、2016年の 77% から 2023年の 95% まで一本調子で上昇した。「供給先を分散すべき」という一般論とは逆に、日本の原油はこの10年でむしろ中東一極に集約していった。背景には、制裁によるイラン産の消失や、非中東の供給源(ロシア・東南アジア等)の縮小がある。原油はホルムズ海峡という単一輸送路への依存をいっそう深めた。
LNG:供給国は多様なまま、米が参入・露は残存
| 相手国 | 2016 | 2025 | |---|---:|---:| | オーストラリア | 28.0% | 39.8% | | ロシア | 8.3% | 8.8% | | 米国 | 0.0% | 7.1% | | (LNG 輸入額 合計) | 3.3 兆円 | 5.7 兆円 |
LNG は原油と対照的だ。最大の豪州が 28%→40% に伸びた一方で、米国産 LNG が 2017 年に登場し(上のチャート=米LNG輸入額の立ち上がり)、マレーシア・カタール・パプアニューギニアなど多くの供給国が残った。シェール由来の米 LNG は 2021 年に 11% まで伸び、その後 7% 前後で定着している。供給国の「数」という意味では、LNG は多様性を保っている。
ただし注目すべきはロシアだ。2022年のウクライナ侵攻後も、ロシア産 LNG のシェアは 8〜9% でほとんど動いていない。サハリン2 への関与をエネルギー安全保障の観点から維持しており、「脱ロシア」は LNG では進んでいない。
読み解き
- 原油は集中を深めた:中東依存 77%→94%。分散どころか一極化が進み、供給途絶リスク(ホルムズ海峡)への感応度はむしろ高まった。
- LNG は多様性を保った:米シェール LNG の参入で供給国が増え、特定1国への依存度は原油ほど高くない。エネルギー安全保障上、原油より調達の柔軟性がある。
- 脱ロシアは未達:ウクライナ後もロシア産 LNG は 8% 台で残る。サハリン2 依存が、欧州型の急速な脱ロシアを難しくしている。
同じ「輸入化石燃料」でも、原油は一極化・LNG は多様化と、10年の進む方向が逆だった。エネルギー安全保障の処方箋が燃料ごとに異なる理由がここにある。
注: 本記事は過去データ(2016-2025年)の記述的分析であり、将来予測ではない。各国シェアは輸入「額」ベース(価格×数量×為替の合成)で、数量シェアとは一致しない。相手国別の金額は財務省貿易統計の HS 品目別データに基づく。
出典
- 相手国別輸入額: 財務省 貿易統計(普通貿易統計 品別国別表 輸入)、e-Stat 経由。政府標準利用規約(出典明記で再利用可)。
編集物著作権: EIC Data (CC BY 4.0)
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publisher = {EIC Data}
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