なぜ日本の電気は CO2 強度が高いのか — 主要 5 か国の電源構成で読み解く
姉妹編 #67「電気の『きれいさ』を主要 5 か国で比べる」 で、日本の電力 CO2 強度が中国に次いで高いことを見た。その理由は電源構成にある。 同じ電気でも、石炭で作るか、ガス・原子力・再エネで作るかによって、1 kWh あたりの CO2 はまるで違う。ここでは Ember Monthly Electricity Data(CC-BY-4.0、catalog の 5 か国 × 7 燃料 = 35 系列の
ember-share-{fuel}-{cc})を使い、主要 5 か国の発電量に占める電源別シェアを並べる。Phase 2 国際ドメイン Ember 第 2 弾。
2025-12 の電源構成(発電量シェア %)
| 国 | 石炭 | ガス | 原子力 | 再エネ計(太陽光+風力+水力+バイオ) | |---|---|---|---|---| | 中国 | 58.5 | 3.0 | 4.9 | 33.4 | | 日本 | 32.0 | 30.7 | 10.7 | 21.9 | | 米国 | 17.3 | 38.2 | 18.7 | 24.6 | | ドイツ | 19.4 | 21.5 | 0.0 | 54.0 | | 英国 | 0.0 | 29.9 | 12.1 | 56.1 |
※ 残り(合計が 100% に満たない分)は「その他化石」「その他再エネ」。値は Ember 月次推計(CC-BY-4.0)の 2025-12 月次値で、ember-share-{coal/gas/nuclear/solar/wind/hydro/bioenergy}-{jp/us/cn/de/gb} から直接読める。
#67 の CO2 強度ランキングとの対応
#67 の 2025-12 CO2 強度(gCO2/kWh)は 中国 592 > 日本 476 > 米国 384 > ドイツ 357 > 英国 192 だった。上の電源構成と並べると、構造がはっきり見える。
- 中国(CO2 最高):石炭が約 6 割。再エネ計は 33% と絶対量では世界最大級だが、石炭の比重が CO2 強度を押し上げる。
- 日本(2 番目):石炭 32% + ガス 31% = 化石 6 割超。原子力は 11% にとどまり、再エネは 22%。震災後に原子力の稼働が落ち、火力(LNG・石炭)が穴を埋めた構造が、そのまま高い CO2 強度に表れている。
- 米国:石炭からガスへのシフトが進み(ガス 38%)、原子力 19% と合わせて中位。
- ドイツ:再エネ 54% と高いのに CO2 強度は英国より高い。理由は 原子力をゼロまで全廃し、石炭がなお 19% 残るため。「再エネを大量導入しても、脱石炭と低炭素ベースロードの維持が伴わないと CO2 は下がりきらない」ことを示す。
- 英国(CO2 最低):**石炭をほぼ完全に退出(0%)**させ、再エネ 56% + 原子力 12% + ガス 30% へ。脱石炭の徹底が最低 CO2 強度に直結した。
つまり、CO2 強度を最も強く規定するのは 石炭シェアであり、その裏返しとして脱石炭・低炭素電源(再エネ+原子力)の比率が効く。日本の高さは「火力依存・原子力低位」という構成の結果である。
象徴的なトレンド
長期で見ると、石炭シェアの軌道は国によって大きく分岐している。英国は 2010 年代に石炭を 0% 近くまで落とし、中国は高止まり、日本は約 3 割で推移している。日本の太陽光シェアは緩やかに上昇しているものの、ベースロードを火力が担う構造そのものは変わっていない。
各チャートは独立した y 軸で、出典・as-of 日付・ライセンス(CC-BY-4.0)を figcaption に明示している。シェアという同じ単位(%)で揃えているため、英国の急落と中国の高止まり、日本の中位横ばいの差を目視で比較できる。
読み取りの注意
- シェア(%)であり絶対量ではない。中国は発電量そのものが桁違いに大きいため、石炭 6 割は世界の排出に大きな意味を持つ。
- 月次データには季節性(冷暖房需要、水力・太陽光・風力の季節変動)がある。短期の上下より構成の差と中期トレンドを見る。
- 各 fuel シェアの月次和は概ね 92〜100%(「その他化石/その他再エネ」を除外しているため)。
- 値は Ember の月次推計(CC-BY-4.0)。確報反映で遡及改定されることがある。集計開始時期は国により異なる(米国 2001-、中国・ドイツ・英国 2015-、日本 2018-)。
関連 Insight
- 電気の「きれいさ」を主要 5 か国で比べる → 同じ Ember データで CO2 強度ランキングを並べた姉妹編(#67)
- 再エネ比率の 5 年トレンド → 日本国内の再エネ比率推移、エネルギー基本計画 2030 年目標 36-38% との距離(#21)
- 国際ドメイン → ECB / EUR 為替 / Ember 5 ヶ国電力(/domain/international)
データと出典
Ember Monthly Electricity Data は CC-BY-4.0 で公開されており、出典明記の上で再利用できる。各系列の現行ライセンスは catalog 個別ページの引用ボタンで確認できる(編集物は CC BY 4.0、個別系列は各 license に従う — 方法論 §9)。
- Ember Monthly Electricity Data(CC-BY-4.0、月次、5 ヶ国 × 7 燃料の電源別シェア %)
- 当データはエネルギー情報センター運営 eic-data-pipeline が毎朝 8:00 JST に自動更新
構成系列: ember-share-coal-gb / ember-share-coal-cn / ember-share-coal-jp / ember-share-solar-jp(4 系列、Ember)/レンダラ: ChartLine ×4
編集物著作権: EIC Data (CC BY 4.0)
📋 引用形式コピー
License: CC BY 4.0 / accessed_at は自動補完@misc{eic-data-world-power-mix-compare,
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note = {Accessed: 2026-06-04; License: CC BY 4.0},
publisher = {EIC Data}
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