LCOE × 電源構成:安い電源ほど日本では少ない
発電コストが最安の風力・太陽光は日本ではまだ数%。最大シェアは火力 73.7%。コスト序列と普及はねじれている。
背景
電源を選ぶとき最も基本的な物差しの一つが LCOE(均等化発電原価)——設備が生涯に発電する 1 MWh あたりの平均コストだ。建設費・運転維持費・燃料費を生涯発電量で割り、太陽光・風力・火力・原子力を横並びで比べられる。
EIC Data の技術ドメインに NREL ATB(米国の権威ある技術コスト基準、CC BY 4.0)の電源別 LCOE が着地した。これを**日本の実際の電源構成(発電量シェア)**と並べると、「安い電源ほど普及している」とは限らない構造が見える。
データ:LCOE(米 NREL)× 日本の発電量シェア(2025)
| 電源 | LCOE $/MWh(NREL ATB 2024) | 日本シェア %(METI 2025) | |---|---:|---:| | 陸上風力 | 20.7 | 1.3 | | 太陽光(ユーティリティ) | 43.2 | 4.1(太陽光計) | | 地熱 | 70.2 | 0.2 | | CSP(集光型太陽熱) | 93.3 | — | | 太陽光(商業用) | 95.1 | (上記に含む) | | 洋上風力 | 112.2 | (陸上に含む) | | 水力 | 115.0 | 9.5 | | 原子力 | 126.6〔2023〕 | 11.2 | | バイオマス | 195.5 | 4.1 | | 火力(ガス・石炭) | 概ね $40-80(※) | 73.7 |
※ 火力の LCOE は NREL ATB に安定系列がなく、本表では概数(定性)。
読み解き
- コスト序列と普及のねじれ:LCOE が最安の陸上風力($21)・太陽光($43)は、日本ではそれぞれ 1.3%・4.1% にとどまる。一方、最大シェアの火力(73.7%)は概ね $40-80/MWh 帯で、最安の再エネより高い。「安いものから普及する」という単純な図式にはなっていない。
- なぜずれるか:LCOE は「平準化した平均発電コスト」であって、①出力の変動性(風力・太陽光は出る時間を選べない)②系統制約・調整力コスト ③立地・適地の有無 ④既存設備の償却済みストック、までは含まない。日本で火力が主力なのは、需要に合わせて出せる調整力と既存設備があるためで、kWh あたりの平準コストだけでは決まらない。
- 再エネ比率はじわり上昇:上のチャート(再エネ比率の月次推移)が示すとおり、コスト低下を背景に再エネのシェアは緩やかに伸びている。ただし変動再エネを主力化するには、出力変動を吸収する蓄電池(コストは発電でなく LCOS=均等化蓄電原価で測る)や系統増強が鍵になる。
注: 本記事は過去データの記述的分析であり、将来予測ではない。LCOE は米 NREL の技術別コスト序列(米国前提)の参考値、シェアは日本の実績であり、両者は同一基準の直接比較ではない。電源選択は LCOE 以外の多数の要因で決まる。
出典
- 電源別 LCOE: NREL Annual Technology Baseline (ATB), OEDI, CC BY 4.0(米国前提・各年版当年値、将来射影は非収載)。
- 日本の電源構成: 資源エネルギー庁 電力調査統計(meti-gen-*)。
編集物著作権: EIC Data (CC BY 4.0)
📋 引用形式コピー
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